家族と親を恨んだまま歳を重ねてしまった人に伝えたいこと

日々の棚卸

 

今頃何をわかりきったことを言っているんだ

と言われそうですが、

あらためてこの題材を取り上げてみます。

なぜなら、原因までは理解できても、

人生を変えていった人の話が

意外なほどに少ないと感じるからです。

50代、60代、70代でも、

ここに囚われている人は数多くいます。

自分が納得する人生を歩む

一助となればと思います。

 

1.生きづらさの陰にある一因

働くことがどうにも苦しい。

仕事の内容が頭に入ってこない。

会社を移っても同じような問題を抱えてしまう。

職場の人の付き合いが本当につらい。

何より、生きていることそのものが苦しい。

お読みになっているあなたは、

どれか一つでも当てはまるものがあるでしょうか。

 

努力と頑張りに疲れ、

能力に限界を感じ、

何をどうしたらよいかわからなくなっていると、

人は動きたくなくなります。

無力感に包まれて、

自分が五感で感じ取る情報

- 人の声や態度、起こる出来事、生じる結果など -

の何もかもが、

自分を非難し、敵視しているようにさえ

思えることもあるかもしれません。

 

この苦しさ、生きづらさの原因が、

生まれ育った家族、

親の影響につながっているとする主張が

年を追って増えています。

毒親と言うのはその一例ですね。

包み隠さず申し上げれば、

私もまたその主張をしながら

生きづらさを抱えている一人でした。

 

2.生きづらさは理解されにくい

心理学や精神医療、自己啓発といった

ジャンルが市民権を得て、

専門家やコメンテータが発信する

様々な情報がメディアを通じて

私たちの日常に届くようになりました。

情報の信頼度はばらつきがあるにしても、

過去に植え付けられた価値観が

今の状況を生み出していること、

過去の中でもっとも大きな影響を与えるのが

親であることは決して不自然ではありません。

 

一口に親の影響と言っても、

事情は様々でしょう。

凄まじい虐待を受けた人もいれば、

何とか社会で働くことはできるものの、

どうにも抑鬱的になってしまったり、

周囲が自分を非難しているように

感じる日々を送るほどの

感性を植え付けられたと

感じる人もいるでしょう。

 

だから最初は、

誰かにわかってもらいたくもなる。

 

しかし、事情を理解してもらおうと

説明を試みる人もいれば

いない人もいるにしても、

実際に納得してもらえることは

そうそうないし、

何より納得してもらったところで

実は自分が良い方向へ向けて

変化できるわけでもないことを

知る羽目になるだけです。

一時的な安心は得られるものの

自分自身が今のままでは、

実情は何も変わらないからです。

世の中は、

いくつになっても親だ親だと

親を責めたててばかりいるんじゃないよ、

と言います。

すると、つい、反発を覚え、

お前たちに自分と同じような経験で

苦しんだことがあるのかと

啖呵を切ってしまうかもしれません。

結局のところ、

やり場のない怒りや哀しみを

どのように処理したらよいかわからず、

途方にくれてしまいます。

 

でも、必要なことは

現実に自分が自由に動いて、

自分が満足して動ける新しい日常を

手にすることですよね。

悪者探しをして、

悪者を名指しして、

悪者を変化・改心させて、

めでたしめでたしとはいかないのが、

今回の話なのです。

 

3.何をしたらよいか

親に限りませんが、基本的に

人・相手は変えられません。

変わらない相手に影響されて苦しいなら、

まず最初にできることは

近づかないことです。

一旦距離を置く!

 

その上で、まずは以下の3つを実行することです。

どんなに苦しくても

自分の生活、仕事、人生を、

自分のできる範囲で再構築すると

心に決めましょう。

(1)苦しんでいるのは自分だと気づく

その囚われの感情、相手に腹を立てていること自体が

自分の今を苦しめていることに気づくこと。

(2)手放す

その感情を一時的にで良いから、

どこかに置いておく、手放すこと。

専門家に聞いてもらうでもいいし、

気の紛れる作業や趣味に没頭する、でもいい。

(3)自分で決めて行動を始める

素朴・単純でいいから、

過去から現在まで、

自分がやってみたかったことを、

無理とか、こんなの何にもならないなどと言わず、

ためしにやってみる。

(4)小さく稼いでみる。

最初はお金の多寡は気にしない。

特にこれまで大企業に勤めていたり、

ある程度の年齢がいっていて、

高給をとっていた人は、

ついそこに意識が行ってしまうけれど、

それ自体もまた親に取り込まれている証拠。

幸せに生きていくのに、

極論すれば平均年収以上の収入なんていらない!

 

人生が軌道に乗り出すと、やがて気づきます。

親もまた一介の不完全な人間だったと。

うまくいっている家は、

そんなところを受け入れているからであって、

自分の家とは大差ないということを。

 

4.変化の先にあること

変化はゆっくりと、しかし確実に訪れます。

人生が回りだし、

自分自身とつながり、

他者とつながり、

日々が少しばかり愉快になってきます。

まず自分、それから大切な人のケアという

順序が必要だとわかります。

理由はどうあれ、自分はさておき、

親の主張を優先してしまったこと、

それが不幸の始まりであることが多いものです。

新しく生き始めると、

自分の中の大切な想いに気づき、

守りたいものが何だったのかが

わかるようになります。

そしてそのために必要だったことを

トライアンドエラーで

自分の意志を確認しながら

自分なりの道を切り開くことだったと

わかります。

さらに今の先に実現したいことが

見えてくるようになるのです

 

そのとき、問題として受け止めていたこと、

親に対する感情は消えてなくなるのではなく、

それもまた自分の一部、人間の一部として、

他の感情とともにある

当たり前のことだと腑に落ちてきます。

怒りに駆られ、彷徨っていた旅が終わるときです。

 

ー今回の表紙画像ー

『西の空に三日月』