自己治療の有効期間

日々の棚卸

 

自己治療という言葉を

聞いたことがあるでしょうか。

 

あまり耳慣れない言葉かも

しれませんね。

 

そもそも、

自己を治療するとは

どういうことなのでしょうね。

 

治療なので、傷ついた自己があって

それを治療するということは

すぐにわかります。

 

擦り傷、切り傷、打ち身、捻挫などの外傷は

比較的わかりやすい例でしょう。

 

骨折、内出血、高熱などとなると

これは自己で治療するのが難しいでしょう。

基本は病院に直行ですね。

 

では心、感情はどうでしょうか。

 

あからさまな医療行為以外に

私たちは傷ついた体や心を

自分たちのやり方で癒すことが

少なくありません。

 

ささやかなおしゃべりや愚痴は

自分を孤立と無力感においやらないための

ある種の治療行為です。

 

私の数少ない出世頭の友人の一人は

お酒もたばこもやらないのですが、

会社であった理不尽に腹を立て、

その日の夜は随分荒れたお酒を飲んだ

そうです。

 

褒められた行為ではありませんが、

そうやってなんとか“うさ”を晴らしたとか。

 

目の前の出来事は全てあなたの鏡だよ、

などと誰が言おうと、

 

生きている限り、

辛いことや苦しいこと、哀しいことを

全くなくすことは難しいと思います。

 

その結果として心がボロボロになり、

落ち込んだり、怒りに苛まれたり、

自分の無力さに嘆き悲しむことだって

誰にも大なり小なり起こること。

 

例えば失恋した時、

例えば職を失った時、

例えば家族を失った時、

例えばお金を失った時、

例えば一人ぼっちになった時、

 

私たちは救いようのないやるせなさを

身体の中に抱え込むものです。

 

そして、この先どうなってしまうのだろう、

と希望を見失い、時には、不安を超えた

闇の中に沈み込んだりします。

 

世の中にはそういったことへの

対処方法をうたう書物や教えが

山ほどあります。

 

2つほど例を示します。

 

・失恋したということは、新しい出会いと関係の

可能性を得たと考えることができる。

離婚でもおなじこと。

 

・職を失ったということは、新しく稼ぐ場所を

見出す可能性を得たことになるし、

自分の新しい得意分野を見出す時間を

手に入れたことにもなる。

 

理屈では確かにそうなのかもしれません。

 

しかし、それがある種の理想論ということは

多くの人が感じることです。

 

確かに嘘ではないのですが、

そこに至るハードルが無限に高く感じられ、

自分がそれを超えられるとは思えないため

だからではないでしょうか。

 

こんな時、本来であれば、

理由はどうあれまずは、

自分の中の傷ついた部分に寄り添い、

自分の中に最低限のエネルギーが戻って

では、どう生きようかとなって初めて

成立する発想なのです。

 

であるにもかかわらず、

弱り果てた自分でいることの苦しさから

逃れたい一心で

えいや、とポジティブな方向へ強引に

舵を切ろうとする行動をとったり、

仮初の快楽の中に逃げ込んだりします。

 

これをして自己治療と呼ぶわけです。

 

恋愛が終わると、

特に相手が自分を見切って

遠ざかることによって終焉すると、

心も体も苦しくなって仕方がありません。

 

晴天の霹靂とは言わないまでも

それまでの日常が大きく変化し

味気なく彩を失い、

そのギャップに追いつけない心と身体を

何とかしないとおかしくなってしまう、

 

だから、

いつしか哀しいメロディを選び、

哀しいドラマを選び、

人と楽しい時間を持つことを避け、

お酒に酔い、

あるいは衝動買いを繰り返し、

馬鹿食いし、

時には世の中から引きこもるような行動もとる。

 

いかがでしょう。

そういう経験ってなかったでしょうか。

 

それらの行動は決して

否定されるようなものではないし、

 

先に述べたように、

その間に前向きになるエネルギーを

蓄えている期間にもなりえたりします。

 

そして幾ばくかの後、

いつまでもクヨクヨしてても

誰かが何かをしてくれるわけではないし、

もう一度自分なりに人生を歩んでみよう、

となったりするわけです。

 

自己治療が有効に作用したケースですね。

 

しかし、

特に抱え込んだ問題が大きい場合には、

それで済まないケースが多々あります。

 

様々なショックの結果、

お酒におぼれて身体を壊し、

衝動買いを続けて借金にまみれ、

他者を忌み嫌うかの如く距離を取り続け、

ギャンブルにのめり込み…、

 

そして、

身体の調子を崩し、

人の関係がおかしくなっていて、

日常生活が壊れてしまっている。

 

これは、意識するしないにかかわらず、

選択した自己治療の期限がとうの昔に

有効でなくなってしまっているケースです。

 

しかもこの状態になってしまうと、

自分だけで立ち直ることが

難しくなってしまってもいます。

 

それは、

いかなるエクスキューズがあったとしても

自分にとって損になります。

 

こう考えてくると、

 

・自分にはどんな自己治療の傾向があるか、

・それを長く継続するとどんな損をするか、

・自己治療の期間を決める

 

ことが必要です。

 

時々引用させていただいている

生態学者のグレゴリーベイトソンは、

アルコール依存症者をして

 

「歪んではいるがその中に

自分を超越しようという試みは見られる」

と述べて、

 

目的を達せられないなりに

依存症者なりの取り組みの意味を

見出しています。

 

ただ、繰り返しになりますが

日常生活がうまくいかなくなっている時点で

自己治療は無効状態になっています。

 

やりきれない状況というのは

誰にもでもあり得ます。

 

その時に一時的に逃げられる手段が

あるのであれば、

お酒でもドラマでも何でも

一時的に逃げこむのはいいと思います。

 

ただそれらはある時点から

必ず自分の心身や日常生活や

人の関係を蝕みだします。

 

有効期間は人それぞれですが、

それを意識だけはしておきましょう。

 

 

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ー今回の表紙画像ー

『麻婆豆腐』

私はマルミヤの辛口が好きです。。。