『だから』わたしはこうなった。
『だから』私はこれを選択した。
『だから』私は………。
『だから』の前と後にある事象。
半ば無意識にまで沁み込み、
あたり前の関係であるかのように使用している
その接続、ほんとに正しいでしょうか。
私たちは生まれ育った家族の中で培った
ものの見方と感性を通じて
世界と接します。
ですから、同じことを見聞き、経験しても、
人によって受け止め方・感じ方も違えば、
当然好悪の情も違います。
自分とどのように接し、
人とどのように接するかを、
決めているわけです。
人生を変えるとは自分が変わること、と、
ことあるごとに述べさせていただいてます。
しかし、
変わる前の自分がしがみ付いている自分なら、
そこにも理由があると思います。
そして、それを理解できるのは
自分しかいません。
今がどうしようもなく辛い、
『だから』その自分を無下に切り離したくない、
『だから』その自分を理解してあげたい、
『だから』その自分を起点とした言動から
成果を出したい、
そう考えている自分がいると思うのです。
一番目の文章に
『だから』という接続詞を適用するのは
少し違和感がある方もいるかもしれません。
ただ、受け入れようとする自分は、
辛く苦しい中にこそいるとすれば
この接続詞の意味が理解できると思います。
ともかくも、
過去の出来事を受け入れ、
過去の自分を受け入れ、
自分の一部とすることで、
初めて人は自己を肯定的に見ることができて、
未来へ進むパワーを得られるから。
それは決して
間違いでも、甘えでも、嘘でも
ありません。
なぜなら、その自分を見失ってしまったら、
今度は何を基準に動いていけばいいか、
わからなくなってしまうから。
私自身、今もその考えに変わりはありません。
しかしその一方で、
次の考え方が身についているのも事実です。
若い頃、
仕事で混乱から心身に不調をきたして
どうしても動けなくなったことがありました。
『だから』自分は今うまくいかない。
『だから』自分はミスばかりする。
『だから』自分は落ち込んでばかりいる。
そんな自分が、どうにもしっくりこない。
ちょうどおかしくなっている原家族の歪んだ形と
自分自身との関係を認め始めた頃のことでした。
『だから』という接続詞は
正しいのだろうか、と。
自分を受け入れることは
『だから』という接続詞になじむのだろうか、と。
今が辛いからしがみ付いているのではなく、
しがみ付いているからこそ今が辛いのは、
その後の人生で言い訳を辞めたことで
ある程度実証されたように思います。
しかし、それが今度は、
何でもしがみ付いて言い訳にしている、という解釈に
つなげたロジックを作り上げてしまっている。
できないものはできない、
それは過去とは関係ない、
怖いものは怖い、
それも過去だけが原因ではない。
しがみ付くことを言い訳にしない方がいい
ということに、
しがみ付くことを続けている。
辛かった、そして目一杯嘆いた、
これからも出てくる感情の膿は、
リアルタイムのものとは限りません。
それは、しがみ付くことを
手放そうということです。
ある意味怖いですよね。
問題を問題のまま放置することにも
なりかねないわけですから。
でも、
しがみ付くことを手放すことで、
それらの問題を自分の一部として
売れ入れられるようになります。
私の身に照らせば、
家族の離散や自死だけじゃなくて、
当時並行して起こった哀しい別離も、
仲間外れも、
見捨てられ感を味わったことも
同じことです。
自分がそこにいてしがみ付いている限り、
人生はそんなもんだと受け止めている限り、
そんな現実ばかりを味わうことになる。
何かができない時、
うまくいかない時、
そこに即効的な手を思いつかない時、
つい、
しがみ付いたことを思い出し、
その感情とつなげてしまう。
そこに、本来横たわっている
哀しみや寂しさの感覚を覆うように、
怒りや苛立ち、絶望感や焦燥感を生じさせ、
居場所を与えてしまう。
この中でも特に強い感情である怒りは、
単独で生じることはありません。
必ず、寂しさと哀しさを伴います。
きちんと味わい、嘆き、癒すことを試みたなら、
一度手放すことを試みる時なのです。
今が辛い、というなら、
“そこ”にしがみ付いているのは、
もっとつらいはず。
何にしがみ付いているかを、
事細かに洗い出すといい。
今の仕事を失ったら食べていけない、とか、
好きなことでは食べていけない、とか、
友人・知人・彼・彼女を失ったら
見捨てられるとか、
辛くて苦しいというなら、
本当にいくつものしがみ付きの思想を
抱えているのではないでしょうか。
これ以上自分を痛めつけないためにも、
しがみ付くことにつなげている接続詞を
見直してみてはいかがでしょうか。
ー今回の表紙画像ー
『氷川丸』
所用のついでに山下公園へ。晴れ渡った空の下、たくさんの人が出ていました。
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