与太話 - 肝試し

日々の棚卸

 

季節外れの話ですいません。

ちょっと書きたくなってしまった。

今回は、その昔見た肝試しに纏わる

エピソードです。

 

肝試しの話や番組を見なくなりましたが、

今もきっとあちこちでやっているのでは

ないでしょうか。

あるいは私が、テレビをあまり見ない

ためかもしれません。

そもそも、社会人になってからは、

某ホーンテッドマンションを除けば

その手の場所に行ったことがないし。

 

神奈川から伊豆の方に出かけると、

国道136号からちょっと入ったところに、

『伊豆極楽巡り』なる看板を見かけます。

とても目立つので、

横を通れば100%気づくはず。

ご存知の方は、ご存知かと思います。

ある時、一緒に温泉に出かけた

ジモティーの同乗者に聞いてみた所、

そこは、それなりに有名な

地元のテーマパーク(?)とのことでした。

テーマパークか。。。

そう思いながら、

入口付近に飾られている、

鬼さんや閻魔さんのデフォルメされた

巨大人形の姿に、何だかとても

懐かしい気持ちになりました。

 

中学生の頃、友達と一緒に、

近所の大学でやっている学園祭に

出かけたことがありました。

町なかから、のたのたと自転車をこいで、

大げさに言えば田園風景広がる中に

ポツンとあるような場所まで、

小銭を握りしめて出向きました。

特に何か期待することがあったわけではなく、

ちょっと行ってみようよ、という

暇つぶしのノリだったと思います。

秋口で、サザンオールスターズが

6枚目か7枚目のアルバムを

出した頃だったような…。

サザンの話は、後から振り返って

この時期だったなと思い出す時に

基準にするようになっただけですが、

ともかくも

それくらいむか~しの

それでいて妙に記憶に残っていることです。

 

そこは地方の芸術大学で、

キャンパスはそこそこ広いのですが、

その広いはずのキャンパスを超えて、

やたら大音量のサウンドが

ガンガンかき鳴らされていて、

ド派手な飾りつけがあちこちに見えて、

と、いかにも学園祭的な雰囲気に

満ちていました。

大学の名前はおそらく、

地元の人でなければ知らないような

無名の大学でしたが、

周囲に娯楽がないせいか、

はたまた別の理由があったからなのか、

老若男女問わず、

そこそこ多くの人で

キャンパスは賑わっていました。

そんな中、

たいして小遣いも持っていなかった私たちが、

何を買おうか、何をしようかと

ひとしきりキャンパス内を回って

うろついた末

さてどうしようか、となった時のことです。

 

目の前に、お化け屋敷が表れました。

 

一応(?)入口の奥の暗がりから

キャーとかオーとか声が聞こえてきます。

入口の周りには、

一応(?)おどろおどろしい地獄絵図が

描かれた板が立てかけられています。

絵が下手だった私(今も下手のままですが)が見ても、

何だか大げさだな、と感じたのですが、

既に斜に構えて生いたところがあったせいか、

そういったお化け屋敷なるものに対しても、

とても冷めた目で見ていました…

と言いながら、

どこかで腰が引けてもいた

チキンでもあったと思います。

 

あまり臨場感を伝えてこない

お化け屋敷の見かけに

特に中に入ろうという気にもならず、

そろそろ飽きてきたこともあって、

帰ろうかと友人と二人で

自転車を置いていた所へ向けて歩き出しました。

門に向かってショートカットしようと、

本来の歩行ルートではないのですが、

キャンパスの花壇の間の細い

道なき道を通り、

建物の横をぐるりと回ったところで、

ぶつくさと声が聞こえてきました。

女の人の声です。

ベニヤ板か何かの衝立が立っていて、

声はその向こう側から聞こえてきます。

すぐ、別の男の人の声が聞こえてきて、

どうも慰めているようでした。

何だか聞いてはいけない話を

耳にしてしまったような気がして、

興味津々になった友人と私は、

二人立ち止まり、

いけないと思いながらも、

べにや板の隙間から中を除いてしまいました。

中には、他にも何人か人がいました。

そこには、お岩さんではありませんが

そんな感じの幽霊の恰好をした

女の人らしき横顔があったのですが、

どうも泣いていたようで、

顔に塗りたくったお化けの化粧が

崩れていました。

周囲の取り巻きには、

一部裏方さんもいるようでしたが、

そこにいた他の人たちも、

被り物や着物や何かで、

コスチュームとかはうろ覚えなのですが、

とにかく神妙な感じで

皆がそこにいました。

どうやら、お化け屋敷のスタッフの

休憩所というか

事務所の脇に出てしまったようです。

正直なところ、当時は話されていた内容も

今一つよく理解できなかったのですが、

今から思い返すに、

就職のことではなかったかと思います。

就職が決まらないのか、

希望のところではなかったのか、

不安なのか、

そんな話ですね。

 

テーブルの上に灰皿があって、

ビール缶も何本か並んでいたような気がします。

 

突然、こちらに向けて声が飛んできました。

「おい、何見てんだ、こら」

隙間からじっと見ていた

私たちに気づいた一人が声を荒げて

怒鳴りながら近づいてきました。

あまりの剣幕と、

場の雰囲気に驚いて、

友人と私は猛ダッシュ。

その場から一目散に走って逃げていきました。

 

帰り道、友人と

「何だったんだろうね、あれ」

といった会話を交わしたような

記憶はあるのですが、

その後は何を話したのか今一つ思い出せない。

ただ、先の言葉のとおり、

既にお化け屋敷なる存在を

冷めた目で見ていた私たちでしたが、

そのシーンに立ち会う羽目になって

社会の縮図を見てしまったような

気がしたのは確かです。

人を驚かせて幾ばくかのお金を取り、

またサークルか何かの団体をも

運営しているような人たちが

そうやってウンウンうなっていた、

しかもお化けの恰好のままというのは、

何だかシュールにも感じました。

 

お化け屋敷を運営している大学生は

楽しく面白く生きている、

勝手にそう思い込んでいた私は、

斜に構えたとは言いながら、

何とも単細胞な中学生だったと思います。

 

考えてみれば、どんな仕事であれ、

面白おかしく働いてばかりの人は

世の中的には、

マジョリティではないのでしょう。

多くの人が生活のためと称して

どちらかといえば収入を得るために

好きという感覚からは程遠い状態で

日々黙々と仕事をこなしている。

 

そんな中で、私は

生きづらさや行き詰まり感を抱えた方の

話を聞かせていただいたりするのですが、

その原型を

実は中学生の時にすでに見ていたのかな。

 

今回はそんなことを思ってみました。

どうか与太で受け取ってくださいね。

 

ー今回の表紙画像ー

『街の夕景と木造橋』