街に暮らしていると、
雑踏を歩くことはあっても、
というか大半は雑踏で、
人が活動している時間帯に静けさはない。
日中は買い物の主婦にお年寄り、
朝夕は会社員と学生、
週末は少し落ち着くにしても、
通りには人がいて、
道路には車が走っている。
ちょっと酔っぱらって、
午前様で帰宅するときも、
国道にはトラックやタクシーが走っている。
私はそんな街に暮らしています。
このブログではときどき、
街の中の自然に目を向けて、
触れてみることを提案していますが、
さりとてなかなか、
ひっそりとした静けさを感じるほど
静まることはまれ。
普段それほど騒がしくない川べりの道も
桜並木が続いていて、
そろそろ終わりだとはいえ、
今の季節は老若男女でとても賑やかです。
夏の蝉ではありませんが、
1日を通じてざわめく街の中にいると、
得られる気付きもまた、
人との関係性にあたる何かであることが多い。
家族のこと、
会社のこと、
友人のこと、
たまたま居合わせた人のこと、
名も知らない他者、
今続いている上司からの叱責の日々、
過去にあった友人からのひどい仕打ち、
自分がやってしまった非礼。
自分の関係性に纏わる諸々の出来事に
自分の感情が占有されて動けない時、
ふと気づいたり、
何かの導きのように降りてきたりした、
ように感じる受け止め方が
それまでの行き詰った自分を
変えてくれるように思えることがあって、
それはとても大切なことです。
気を付けたいのは、それが、
流行り廃りや誰かの欲求に絡めとられて
自分に即してない場合ですが、
何にせよ、
人の中に生きる自分が
人の中で生きるための気付きを得るのは
それが必要だからだと思います。
私たちは、
必要のないことはやらないからです。
必要がないと思えることでも、
自分がやっていることにはそれなりに
何某かの意味を含んでいるものですから。
★
必要がないことはやらないと書きましたが、
必要だけれどやれてないことは
あるのかもしれません。
たまたまそういう街に暮らしているのか、
そういう時期にあたっているだけなのか、
それはわからないのですが、
私が暮らす街は、年に何度か、
緩やかな静けさに包まれます。
朝起きて街を歩いていても、
夕刻の大通りも、
人の影はまばらで、車はたまに通る程度。
ふとおとずれた静かな街を歩いていると、
眠っていた?
押しやっていた?
見ないようにしていた?
体の感覚が訴えかけてくることが
あるんです。
こういうのがほしいな。
こういうのがあるといいな。
こんな状況だったらいいな。
同時に、光景が蘇ってきます。
そう、新しく出る、というより、
蘇ってくるんです。
つまり、
ずっと前からそう感じていたんですね。
水辺の風景を生活に取り込んだり、
知識と皮膚感覚が繋がるライブラリだったり、
同じ気持ちを抱える人々が
互いに寄り合う場所だったり…。
この感触を初めて感じた時は、
何だかよくわかりませんでした。
何かが私の胸の奥で、
くすぐるような
蠢くような、
秘かに壁をたたくような、
そんな感じで、
日常が荒れていた頃には、
きっと、
無視していた“症状”です。
今は、『ああ、ボクを作ってくれている
大切なシーンたちと繋がっているんだ』
と感じます。
そんな時には、
あれほど遠ざけたかった誰かでさえ、
その中の大切な一コマなのだと思えます。
★
ほしいもの、というと、
お金、健康、好きな仕事、大きな家、
自由、高収入、素敵な伴侶、若さ、
良いルックス、取り巻き、…
などが挙げられるかもしれません。
別に悪くはないと思います。
どこかで聞いたような言葉で、
えらく抽象的な気もしますが。
ところでそれ、
ホントにあなたがこの人生で、
あなたがあなたであるが故にほしいものですか?
もっと身近で、
もっとあなたの生に即していて、
もっとあなたにとって当たり前の欲求で、
そんなものはないでしょうか。
静けさに身を置くこと、
ひとりの時間を取ること、
を説くメディアは数多あふれていますが、
その一方で、
ひとりを孤独と称して
そうやって暮らすことは良くないことだと、
世の中は、メディアは、
手を変え品を変え、
訴え、刷り込んできます。
それに呼応するかのように、
行き場を失い、逃げ場を持たず、
追い詰められて、
何をどうしたらよいかわからない人ほど、
孤独から逃げようと躍起になりがちです。
そのことに気づいて、
あなた自身が、本音でほしいものを
静けさとひとりの時空間を利用して
感じ取れるといいですね。
ほしいものが具体的になると、
単に「そんなの無理だよ」
とは思わなくなります。
ほしいな、あるといいな、
という感覚は、
あなたが当たり前に存在していることが
当たり前である、そんなあなた、
今は自信を失い、世の中から隠れ、
自分を評価する自分からさえ隠れながらも
ひっそりと胸の奥底に息づいて、
あなたにとっての生きる価値を育み、
見つけてくれるのを待っているかもしれない、
そんなあなたが持っているのでは
ないでしょうか。
動くに動けない、元気が出ない、
何歳になっても過去が襲ってくる、
そんな腐海の森の下に息づく、
あなたにとってのほしいものを
静けさの奥に探してみてはいかがでしょう。
人の気配のない街を歩いていたら、
何だか違う場所に着地してしまいましたね。
ー今回の表紙画像ー
『葉桜』
春も終わりだなと、暑さの苦手な私は感じています。
家の近所にあった菜の花畑。
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