コンサートの帰り道

日々の棚卸

 

何年か前、

初めて渡辺貞夫氏のコンサートに

行きました。

 

ちょっと日常を変えてみたかったというのも

ありましたが、

 

相談や人の関係や他のよしなしごとで

少しばかり日常がアップアップしていた

こともあって

 

相談を受ける側がこんな余裕がないのは

いかがなものかと理由をつけて、

 

以前、おそらく30年!くらい前から

ずっと気になっていて、

でも一度も足を運んでいなかった

コンサートのチケットを急いで手配して、

 

それもちょっと奮発して、

最前列から何番目という席を予約して、

 

ある冬の暮れに、

いそいそと都心のホールまで

出かけていきました。

 

30年前というのは、

 

当時暮らしていた街の駅地下にあった

CDショップで初めて氏のアルバムを

手に取った頃のことで、

 

時々お話ししているように

今からは想像もつかないほど混乱していて

その混乱の理由もわからず日常が

荒んでいた頃のことでもあって、

 

混乱している理由を

何とかわかるようにしようと

自己啓発、文学、ルポ、映画などに

解のヒントを求めていて

 

そんな状況が日常になっていた中で

手に取ったのが、渡辺貞夫氏の

ベストアルバム『Selected』でした。

 

体が横を向いたまま

右手にサクソフォンを肩に担ぐように持ち、

こちらを笑顔で見つめるジャケットで

 

その渋くて格好いい写真と

90歳を超えた今の姿が

あまり変わらなく見えるというのも

凄いことだなと思います。

 

もともと、

名曲『My Dear Life』が聴きたくて

選んだアルバムで、

 

この曲名をそのまま

当ページの名前にも

使用させていただいています。

 

90歳を超えてなお、

毎月5回6回とライブを行い、

全国をツアーで巡っているのだから、

 

好きでなければ、

そしてある種の生き方に達観していなければ

できないことなのかなと思うことがあります。

 

で、

 

そんなコンサートに出かけて、

各国から参加したベーシストやピアニストと

共演しながら、

 

とてもその年齢には見えないエネルギッシュな

演奏シーンを見ているうちに

ふと父とことが思い出されました。

 

 

私はお年寄りと接する機会が少ない

子供時代を過ごしました。

 

町で暮らす典型的な核家族で育ったのですが、

暮らす団地は我が家と同じような核家族で

地方から出てきた人たちばかり、

 

父母の田舎は遠く、

子供の頃は盆の時期に、父の実家に

帰省するくらいで、

 

当時習っていた習字の先生を除けば、

 

その、年に一度の夏に父方の

しわくちゃ顔の祖母と会うのが、

お年寄りと接する数少ない機会でした。

 

私が小学生の頃の祖母の年齢は

およそ60歳を少し過ぎたくらい

だったと思いますが、

 

子供心に祖母のことを

“しわしわだ”と思いながら見ていたのを

よく覚えています。

 

今はそのくらいの年齢なら、

バリバリの現役に見える人も

少なくありませんし、

 

実際、法律の施行もあり、あちこち企業で

再雇用、再々雇用が行われているので

65歳、70歳まで、

しっかりと働く人が増えていますよね。

 

自ら生を断ってしまった父が

もしまだ生きていたとしたら、

一体何歳まで働いていたかなと思います。

 

父は酒がほとんど飲めないから、

きっと肺がんにでもならない限り、

煙突のようにタバコをふかしながら、

 

何かと管を巻いていたのではないかなと

想像します。

 

加えて、寂しがり屋なのに、そんな自分を

認めてないものだから、愚痴をこぼしては

あちこちで煙たがられたのかなとも。

 

結局話し相手がいなくて、でも寂しいから

一度は拒否っていた私のところに

話しをしにくるのかもしれません。

 

父の死までの何年か、

私が父に腹を立てて距離を置いていたのは、

 

父の生き方、あり方が、

当時の私の器では到底受け入れられず、

自分にもたれかかってくる様をかわす術も

持たなかったからですが、

 

今ならそんな父を受け入れて、

話しを聞けるような気がします。

 

 

アンコールを終え、

渡辺氏をはじめとする演奏者が舞台を去り、

コンサートが終了すると、

 

ホールを出て、

すっかり暗くなったビル街を

一緒に楽しんだ他の観客たちが

帰宅の途につく波に紛れて

駅へ向かいながら、

 

大好きなジャズを演奏することは

渡辺氏にとって当の昔に生業を超えて、

今は素敵な人生を生きられたことへの感謝を

体現することなのだろうと感じました。

 

そして同時に、

それは幸せの絶対条件というわけでは

決してないのだろうとも。

 

同じ世代を生きた私の父を始めとする

人々の大多数は

生計を立てることに精一杯で、

 

好きなことをして生きていくという発想自体、

多くの人が夢物語と捉えていたのかも

しれません。

 

きっと仕事と言わず、近所づきあいと言わず

人との関係の中で誰もが衝突を繰り返しながら、

それでもその人にとっての幸せの形が

その人ごとにあって、

 

好きなことを究めて生計を立てられなくても

毎日歯を食いしばってばかりではなくても、

生きることを楽しむことはできて、

 

実際にそんな状況を体現している人もまた

少なくなかったように思います。

 

父の人生の終わり方は哀しかったけれど、

そこに至る旅路で

少しでもそんな楽しみ方を感じていてくれたら、

と、過ぎ去った時間に思いを馳せました。

 

素晴らしいステージを演出してくれた

渡辺氏の笑顔は、

好きなジャズを演奏しているからというのも

あるのかもしれませんが、

 

楽しい、幸せという感覚を

体現した表情のようにも感じられました。

 

それは好きなことをしているかとは別に

誰もが持ち得るもので、

そんな笑顔に父の笑った顔が

重なったような気がしました。

 

 

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ー今回の表紙画像ー

『真昼?のお月様』