心のプラシーボ効果を発揮するためには

日々の棚卸

プラシーボ効果というのがあります。

『鼻くそ丸めて丸薬となす』

というあれです。

ご存じない方のために説明すると、

プラシーボ効果とは、

本来は症状を改善する効果が

期待できないものを、

効果がある薬と勘違いして取り込んだら、

明らかな改善が見られた、

ということです。

小麦粉を小さく丸めてフライパンで炒め、

ヒマラヤの宝石とか名付けて

クスリおたくの男に売りつける話が

こち亀の初期の作品にあったような

記憶があります。。。

もちろん、取り込んだ当人は

効果が期待できるものと

思い込んでいるところがミソですね。

 

表現の仕方はともかくも、

そういう側面が心理の世界にもまた

あると思います。

それをどう呼ぶかは人それぞれ。

ただ効果について言えることは、

身も蓋もなく聞こえるかもしれませんが

薬の効き目がそうであるように、

当人がそう思い込んだ時です。

 

傍から見たら決してそんなことはない人が、

働き方を変えたところで、

自分の望む生活なんて得られない、

やりがいのある仕事なんて見つからない、

自分が納得する生き方ができるはずがない

そんなふうに思い込んで、

自ら動くことなく、

苦しんで落ち込んで卑下して

人や世の中を悪く言ってるとすれば、

これはもう見事なプラシーボ効果です。

 

来談者中心療法は

故カールロジャース先生による

クライアントへの接し方の基本で、

大切なこと、気づき、解は

クライアントがちゃんと知っていて

カウンセラーはそれを信じて

細かなカウンセリングテクニックを

駆使するよりも傾聴する

というものです。

そのロジャース先生は、

幻想こそがその人にとっての現実だ

とも言っています。

幻想なくして、生きられる人は皆無。

誰もがどこかで思い込みをもって

生きているわけで、

恥ずかしいことでも何でもありません。

 

心の領域に関しては、

ほんとはプラシーボでないものなんて

存在しないんじゃないかな、

とさえ考えることがあります。

いかにそう思い込めるか。

いかに没頭できるか。

いかに自分に酔えるか。

これはもう理屈の世界ではない。

 

前回、自分が思う世界が

現実化するという話をしました。

それは言い換えれば、

プラシーボ効果の集積の結果とも言えます。

思い込んで行動して考えて

また思い込んで行動して…。

都合の良いように思い込み続ければ、

自分の思い描く世界が実現できる、

少なくとも理想の世界に近づくことができる

と考えることもできるかもしれません。

幸か不幸か、

ご存知のようにコトは一筋縄ではいかない。

思い込むこと、

信じ切ること、

当然だと思うこと、

常識だと思うことは、

頭で考えて実行できることではないからです。

これは前回述べた通り。

 

私たちは久しく、

モノが豊かで、

情報にあふれた世界に生きています。

その真偽のほどはともかくとして、

全てを処理することは

間違いなく無理なほど、

凄まじい量が様々な媒体を通して飛び交い、

目に耳に肌に飛び込んできます。

完全に正しい答えはなく、

その中で、

衣食住を整え、

安全安心を確保し、

世の中に認められ、

やりたいことをやり、

なりたいものになり、

実現したい世界を実現しようとするために、

私たち一人一人がその数だけ、

その人だけの思い込みの世界を

自分の中に内在化していて、

それに沿って日々悪戦苦闘しながら

生きています。

私たちは、

飲んで食べて寝て、

暑さ、寒さ、雨露をしのぎ、

命を長らえ、家族を守り、人とつながり、

人生を歩いています。

保証したいことがあるとすれば、

本当はそれ以上でも以下でもないはずです。

しかし、残念ながら、

自分の本音とずれたところで

世の中の評価を上げようとばかりしていると、

それに沿って頑なに実践していった結果、

衣食住と安全安心を

脅かしてしまうようなことに

なってしまっていたりします。

特に、個人の健康と家族の関係に優先して、

世の中の指標を物差しに生きていくことは、

本末転倒以外の何ものでもありません。

 

私たちはなんだかんだと

世間の評判や人の見方が

よく考えればおかしいはずのことであっても

あたかも正しいかのように

受け止めていることは、

先に自分をどう見ているかのところで

述べた通りです。

 

働き方を変えたところで、

自分の望む生活なんて得られない、

やりがいのある仕事なんて見つからない、

自分が納得する生き方ができるはずがない

と。

 

自分で勝手に騙されてしまっている。。。

 

そして実は、そのことを誰もがどこかで

薄々気づいているのに、

一方で自分の本音に基づく想いに向けては

動こうとしない。

だから、自分なんて…ということにして、

つまり騙されたことにしておく…。

 

騙されたことにしておかないと、

不安や怖れと正面から

向き合わざるをえなくなるから。

それまでの自分の経験にそぐわない

言葉や教えに対して、

容易に背を向けるのです。

 

心理の世界は見えない世界です。

しかし唯一目に見える形で、

効果を示すことができるものがあるとすれば、

自分が生きていく上で、

望む未来に向かう働き方、仕事を選択し、

その継続の中で自分が満たされているかを

知ることでしょう。

 

そこに向けての思い込みこそが

今の世界を実現しているのなら、

少なくとも言葉が示す世界が、

自分が実現したい世界を示してもいるのなら、

それが本来の処方薬だと感じるのであれば

実践してみることが必要ではないかと思います。

 

プラシーボであるかどうかを判別するには

自分の中に湧きあがった気持を

叶えていこうとすることを繰り返す中で

感じ取れるようになるしかありません。

判断だけはいつでもできるでしょうが、

自分の本音と感じるモノに従って

行動を繰り返したことがないと、

自分が納得するジャッジができないのです。

 

自分の想いに従って気持ちと行動とを

ドライブしてくれるもの。

それがあるといいですよね。

たとえプラシーボであったとしても。。。

 

ー今回の表紙画像ー

『芋煮』

ときどき無性に食べたくなって作ります。

材料は、里芋、牛肉、ネギ、豆腐、マイタケ、こんにゃく、ニンジン、大根、ゴボウ。うんま~い。